ふむ、この質問の意図は、つまり、官能小説を書く以上は、普段の気持ちを制御した方が、逆に作品に魂がこもるんじゃないですか? と訊いてるわけですね。
だとすると、その覚悟は、半分は正しいよ。
ただ、世間に公表する官能小説は、あなた【だけ】のストーリーじゃない!!
そのことがよく判っていれば、気分がどうしようがしまいが、皆さんの自由です。
以下、ちょいと理屈っぽいことを書きますよ。
官能小説を書く上での気持ちの問題
官能小説の役割
官能小説の役割は、ぶっちゃけたところ、読者の想像をふくらませること!! これに尽きますね。
読者の皆さんは、書店やコンビニやネットで売られている多くの官能小説の中から、「これだ!!」という作品を選び、それを夢中になって読むわけですが……。
プロの作家は、特定の読者の「これだ!!」にこだわり過ぎては、他の「これだ!!」の要望を持つ読者を逃してしまいますから、なるべく多くの読者を獲得するよう、作品の内容や表現にプロのテクニックを駆使させます。
読者の要望
さて、ここが厄介なところですけれど、当然ながら(仕事とは基本的に無関係なところで)書き手には書き手の独自の要望があり、「これだ!!」というものがありますよね。
どこに発表も掲載もする予定のない、あくまで自分一人が愉しむために小説を書くならば、むろん自分一人の「これだ!!」の要望に忠実であって構わないのだけれど、プロの作家は「そう」はいきません。
かといって、書いているオノレの気分がぴくりともしないような作品では、おそらく誰の要望も満足させることは出来ないでしょう。
そのあたりの【微妙な】調整が、じつは売れる官能作品と、そうでない作品との【大きな】ギャップになるはずなのですが……。
なるべく大勢の読者の「これだ!!」の要望を、常に念頭に置くという、ある種の冷静さ、客観性をけっして忘れずに原稿を書きながら、かつ、オノレの気分は好調に保っている状態。
この状態が、官能作家にとって、最も優れた執筆環境と言えるんじゃないですかね。
肝心なことを忘れないこと
で、肝心なこと。
執筆途中では、オノレの気分を鎮めさせないことことです。
一旦気分が沈んでしまうと、原稿を書こうというエナジーが損なわれるからです。